ふとしたきっかけで、神戸の友人に玉岡かおるの『お家さん』という本を教えてもらい、しばらく時をおいて探してみました。なんにも予備知識もないままよんでみました。
ところが、面白い!どんどん吸い込まれていきました。鈴木商店という一大商社の女将のことが書いてあるということが朧気に、わかりました。よねさんの一つ一つの決心と行動、それが点から線になった時、番頭さんの直どんや柳田さんが行動に移る時、機が熟すのです。小説とはいえ、よねさんは偉い方です。玉岡かおるさんのペンの運び、プロとはこういう仕事をする人をいうのだという感じさせられました。作者は、登場人物に見事に命を吹き込まれる人です。
神戸へいくチャンスが到来しました。よねさんのお墓参りをしたいといつの日から思いつづけたでしょうか。お墓をあらゆる方向からさがしました。やっとやっとわかりました。墓地がわかってもお墓の場所がわからないと意味がありません。北野のさらに北、追谷墓地によねさんは眠っておられました。管理を委託されたお花屋さんが日曜でもお墓の場所を教えてくださいました。山をどんどん登り、ずっと奥の14区だったかの所に、一段と背の高いお墓がありました。鈴木家のお墓でした!!その前に立つと、体中が震えました。お花をお供えすると、今度は、なぜだか知らないけど、涙が止めども無く流れてきました。よねさん、貴女の決断は正しかった。どうか御冥福を。私も貴女のようにまっすぐな道を歩みます。どうかお守り下さい。
ポストの中の芳名録には金子さんや柳田さんといった番頭さんの末裔の方?のお名前がありよねさんの遺徳がしのばれました。村松 範子